technology

テクノロジー

鉄鋼業における
CO2削減のチャレンジ

今後、地球規模での更なるCO2削減が望まれていますが、そのためには技術開発が鍵であり、長期的には、革新的技術による抜本的な対策が不可欠であると考えられます。
一方で、水素を活用した製鉄を実現するにはさまざまな技術的課題があります。それらの課題について紹介します。

基本的な高炉・転炉法の概要

(出典)日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050
https://www.nipponsteel.com/ir/library/pdf/20210330_ZC.pdf

各プロセスのCO2排出量

  • 国内CO2排出量のうち、15%は鉄鋼から排出されています。
  • カーボンニュートラル実現には、鉱石還元プロセスのCO2削減が重要

鉄鋼製造プロセスからのCO2発生比率(t- CO2 /t-粗鋼)

※図を拡大して見ることができます。

 (出典)「Carbon Trust, International Carbon Flows – Steel (2011)を改変」

CO2削減のチャレンジ①(水素による還元)

課題

炭素による還元は発熱反応であるのに対し、水素による還元は吸熱反応で温度低下するため、水素還元比率を増加させるには水素の加熱が必要です。

従来高炉 水素高炉・シャフト炉
加熱気体
(爆発リスク)
空気
(なし)
水素
(あり)
送風量 数千Nm3/分 左記に加えて大量の加熱水素吹き込みが必要
加熱方式 熱風炉
(直接加熱した耐火煉瓦との熱交換)
安全確保のため間接加熱などの新規技術開発が必要(加熱効率に課題)

吸熱反応に対応する技術が必要

(出典)日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050など
https://www.nipponsteel.com/ir/library/pdf/20210330_ZC.pdf

CO2削減のチャレンジ②(スクラップ・還元鉄使用量の拡大)

  • スクラップに混入している銅、還元鉄中のリンなどの不純物による品質制約
  • 溶解中の窒素の混入による品質制約
    この2点により、電気炉で製造できる鋼種には制約があり、特に低品位原料による高級鋼の製造は困難です。

平木岳人也: 第23回廃棄物資源循環学会研究発表会(2012)23_269を改変

Jones, A.J.T., Assessment of the Impact of Rising Levels of Residuals in Scrap, Proceedings of the Iron & Steel Technology Conference (2019)を改変

混入する材質有害元素の無害化技術確立による電気炉での高級鋼製造にチャレンジ

(出典)日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050など
https://www.nipponsteel.com/ir/library/pdf/20210330_ZC.pdf

複線的な取り組みの重要性

  • カーボンニュートラル製鉄に向けて各プロセスともに優位性と問題点があり、複線的な技術開発が必要。

優位性
  • 生産性が高い
  • 既存設備を使用可能
  • 低品位鉱石使用可能
  • 高級鋼生産可能
  • CO2排出量が少ない
  • CO2排出量が少ない
  • 100%水素還元が可能となればカーボンニュートラル実現可能
問題点
  • コークスをカーボンニュートラル還元材(水素、メタン等)に置換する必要あり
  • CCUSの活用が不可欠
  • 水素還元時、炉内温度低下対策が必要(現時点で未確立)
  • 水素コストが高い
  • 生産性が低い
  • 低品位原料による高級鋼製造困難
  • スクラップのみでは鉄源不足
  • カーボンニュートラル電源必要
  • 電力コストが高い(国内)
  • 低品位鉱石の使用困難
  • 水素還元時、炉内温度低下対策が必要(現時点で未確立)
  • 水素コストが高い
  • 設備投資金額が高い

JFEグループ環境経営ビジョン2050
https://www.jfe-holdings.co.jp/investor/zaimu/g-data/jfe/2020/2020-environmental-management-vision210525-01.pdf

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